次世代加熱装置のコア技術、電気配線の無い革新的無電極ランプを用いて半導体の急速加熱を実現
次世代加熱装置のコア技術、電気配線の無い革新的無電極ランプを用いて半導体の急速加熱を実現
国立大学法人真人线上娱乐大学院工学研究院先端電気電子部門の鮫島俊之教授、有馬卓司准教授、蓮見真彦助教と株式会社オーク製作所、テクノリサーチ株式会社は、無電極発熱ランプをマイクロ波により遠隔加熱する半導体の急速加熱技術により、非晶質シリコン膜の高品質な結晶化を達成しました。電気配線を必要としない無電極発熱ランプは省エネルギー性、耐久性、保守性に優れており、今後、革新的無電極ランプを用いた加熱装置およびユニット供給への道が拓けることが期待されます。
本研究成果は、2019年2月7日付で、米国電気電子学会(IEEE)のIEEE Accessにオンライン公開されました。
論文タイトル:Carbon Heating Tube Used for Rapid Heating System
URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/8636915
現状 :さまざまな製品の製造現場に欠かせない加熱処理の装置では、施された配線を通じて投入される大電力によってヒーター線が発熱し、対象を加熱します。環境への配慮が重視される現在、その省電力化が強く求められています。また、加熱装置は電極やヒーター線と電気配線との接続部にかかる大きな熱ストレスにより断線を生じ、定期的な部品の交換を必要とする問題も抱えています。修理費用が高額になること、修理期間が長期に渡ることも珍しくありません。断線しない長寿命のヒーター、交換頻度が低くかつ容易に交換可能なランプユニットに対する要求は高いものの、その解決策は得られていません。電力コスト削減、メンテナンスコスト削減、ダウンタイムの短縮は、加熱を必要とするあらゆる製品製造分野に大きな波及効果が見込まれます。
研究体制
:本研究は、真人线上娱乐大学院工学研究院先端電気電子部門鮫島俊之教授、有馬卓司准教授、蓮見真彦助教らと、株式会社オーク製作所(http://www.orc.co.jp/)、ならびにテクノリサーチ株式会社(http://www.tec-research.co.jp/)の研究チームにより行われました。また、本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)シーズ育成タイプAS3015022Sの助成により行われました。
研究成果
: 研究チームでは、カーボン粒子を石英管にアルゴンガスとともに封入した無電極ランプであるカーボン?ヒーティング?チューブ(CHT)を開発しました。CHTにマイクロ波を照射すると、カーボン粒子がマイクロ波を吸収して発熱します。CHTは家庭用電子レンジの3分の1程度の200Wの電力で1279℃まで加熱され、均質な強い発光を示します(図1)。CHTには電極がなく、配線を必要としないため、耐久性に優れています。また、配線を通じた熱の逃げが発生しないため、これまでにない省エネルギータイプの加熱ランプといえます。さらに、従来のランプやヒーターに用いられる高価なレアメタルを必要とせず、安価な製造も可能です。
今回、このCHTを無電極発熱ランプとして、図2のような半導体急速加熱装置を試作開発しました。導波管を通して上部円筒?下部半球型のアルミニウム製筐体に導入されたマイクロ波は、筐体内に設置されたCHTに効率よく吸収されます。さらに、赤外線放射温度計を用いてCHTの温度をリアルタイムに測定して、発振器のマイクロ波出力を制御する温度調整機能を実装しました。本加熱装置を用いて、長さ60mmのCHTの直下に石英ガラス基板上に形成した非晶質シリコン薄膜試料を設置し、駆動ステージを用いて試料を移動(図2)したところ、試料全面の色が変化しました(図3)。色の変化は、非晶質シリコン薄膜が加熱により結晶化したことによるものです。分光反射率スペクトルとラマン散乱スペクトルの測定結果の解析から、試料全面に渡って均質な結晶化が達成されたこと、及びポリシリコン薄膜トランジスタに実用化されているレーザ結晶化膜に匹敵しうる0.92の高い結晶化率を持つ高品質な結晶化膜が形成されたことが分かりました。
今後の展開
:今回の結果は、CHTを用いた加熱装置のさまざまな応用の可能性を示しています。従来に無い新しい高効率発熱ランプ、CHTにより加熱装置の市場に低装置製造コスト、低ランニングコスト、低メンテナンスコスト製品の参入が期待できます。
◆研究に関する問い合わせ◆
真人线上娱乐大学院工学研究院
先端電気電子部門 教授
鮫島 俊之(さめしま としゆき)
TEL/FAX:042-388-7109
E-mail:tsamesim(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
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