2014年10月28日 ミクロなゼリー球を多様な形に成形することに成功

ミクロなゼリー球を多様な形に成形することに成功 ~ミクロ材料の形成法が日常を変える~

真人线上娱乐大学院工学研究院先端物理学部門の柳澤実穂(やなぎさわ みほ)特任准教授と九州大学大学院理学研究院物理学部門の鴇田昌之(ときた まさゆき)教授らのグループは、温度を介した相分離 注1 とゲル化 注2 の速度を変化させることで、100分の1ミリメートルスケールのミクロなゼリー球を、従来の球型やカプセル型だけでなく、三日月形や星形などへ成形することに成功しました。ゼラチン水溶液に、温度を下げると分離する分子 注3 を混ぜ、小さな液体の球として油中に分散させて温度制御すると、ゼラチンゲルの形は変化し、様々な形のミクロなゼリーを形成することが可能になります。この成果は、ミクロ材料の形成法に応用することで、多彩な機能付与を可能とします。特に食品や医薬品など日常的に広く用いられることが期待され、ゲルの形状を変化させることで、独特な食感を持つ食材を製造したり、人体内で薬剤放出する速度を制御したりすることが可能になります。

本研究成果は米国科学アカデミー紀要オンライン版に掲載されました。

米国科学アカデミー紀要(別リンクで開きます)はこちら

米国科学アカデミー紀要:英語ではProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(略称PNAS)

背景:小さなゲルは、ゼリー食品や化粧品、薬用品など、日用品には欠かせない物です。例えば、カプセル薬が薬剤をゲルカプセルで閉じ込めているように、ゲルの形を制御することは機能開発にとって非常に大切です。しかし、ミクロなゲルの形状制御はその大きさゆえに難しく、球形やカプセル形以外へ形成することは困難でした。ミクロなゲルの形を自在に制御できれば、食品における触感や味を形に応じて変化させるなど、形に由来した機能を与えることができるため、その手法が渇望されていました。

研究体制:本研究は、真人线上娱乐;柳澤実穂特任准教授(2014年4月まで九州大学大学院理学研究院物理学部門 助教)、九州大学;鴇田昌之教授、坂上貴洋助教、濁川慎平氏(2014年3月まで大学院理学府修士課程)、慶應義塾大学;藤原慶助教が共同で実施しました。

研究成果:ミクロなゲルの形を自発的に制御する上で、私達は細胞の多様な形に着目しました。細胞は、様々なタンパク質からなる水溶液を主に脂質からなる細胞膜が覆っています。そのタンパク質溶液は、分子の相分離やゲル化などを制御することによって、適切な形を維持しています。そこで、ゲル化するゼラチンに、ゲル化せずゼラチンと相分離する分子(PEG)を混ぜた水溶液を準備し、それを脂質膜で覆うことで細胞モデルを作成しました。細胞モデルは、温度を介した相分離とゲル化の速度、そして脂質膜とゼラチンとの親和性(濡れ性)に応じて、球形やカプセル形だけでなく、三日月形や星形、円盤形など、多様な形のミクロゲルを自発的に形成することを見出しました。

今後の展開: この成果を、食品や医薬品など日用品に広く用いられている様々なミクロ材料の形成法へ応用することで、形による食感や薬剤放出の速度制御など、多彩な機能付与が期待されます。

図1:ゼラチン(写真の白、イラストの黄色)とゼラチンと相分離する分子(写真の黒、イラストの灰色)からなる小さな液滴がみせる多様なゼリー球の形。球の半径は、凡そ1mmの1/20。

語句解説
注1 相分離:互いに混ざり合っていた分子同士が、温度等を変化させると分離(相分離)する現象。
注2 ゲル化:ゼリー球に含まれるゼラチンは、温度を下げると液体から固体へ変化(ゲル化)する。
注3 分離する分子:ゼラチンと相分離する分子としてポリエチレングリコール(PEG)を使用。

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